思い出は輸出できない

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 鉄道と言えば日本、日本と言えば鉄道だと思っている、いや、思い込んでいる人は多い。私にも少なからずそういう気持ちはある。

 でも記事にあるように、ものづくり大国日本が作っているのは、今や通勤車両と新幹線だけらしい。特急や長距離列車はもう作っていない。ローカル路線で頑張っている観光車両も、要するにリノベーション物件みたいなもの。

 日本のナショナリズムと結びついた、いわゆる「クールジャパン構想」は、結局のところ「もの」ではなく、「イメージ」の輸出でしかない。中身が伴わないものに、2度目はない。こんなことを続けていては、過去の栄光も未来の信用も失ってしまう。

 アニメーションにしても、今や日本よりも韓国や中国のほうが、待遇も技術も良いと聞く。もはやジャパンアニメの下請けではない。

 アイドルもそうだ。今、世界で活躍しているのは、K-POPアイドルたちだ。今の日本に世界レベルの公演ができる若手がいるだろうか。

 まさか、次はお笑い芸人を輸出するつもり?

 言うなれば今の日本は、ものづくり邪馬台国。結局のところ、クールジャパンとは壮大なる「内輪ノリ」であることを認めない限り、世界で存在感を示すことはもうない。

 それなのに、成果が出ないと「努力が足りない」で済まされてしまう世の中にますますなっているようで、近頃つらいな。

 

 ところで、話は矛盾するようだが、日本を世界に広めることが本当に大事なのかという視点が、これからは逆に必要にならないだろうか。誰もが手軽に情報を発信し、手に入れることができるインターネット社会では、ほとんどのことは隠していても広がっていく。

 昔から、メディアに取り上げられたばかりに、お気に入りの場所(や人)がすっかり変わってしまったなんて、特に珍しいことではないけれど、これからはそのようなことが、世界レベルで起きていく。

 日本は、誰もが知るではなく、知る人ぞ知る存在を目指すくらいが、実は丁度良いのかも知れない。このままでは、いずれ世界の誰からも見向きされなくなってしまうのだから。